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福岡家庭裁判所 昭和31年(家イ)502号 審判 1957年4月16日

本籍 東京都 住所 同じ

申立人 田中光子(仮名)

本国 アメリカ合衆国アーカンソー州 住所 福岡市

相手方 ハンブルック・エル・キャンペル(仮名)

主文

申立人と相手方とを離婚する。

申立人と相手方との子ドナ・リー・キヤンベル及びドナルド・リー・キヤンベルの親権者を相手方と定める。

理由

申立人の戸籍謄本と相手方双方本人尋問の結果とに依ると、申立人は日本国籍を有する者であるが昭和二六年一月○○日アメリカ合衆国の国籍を有する相手方と婚姻し、現在後記認定のような事情でその住所を肩書地に、相手方はその生活の中心をその肩書地に有していることが認められる。

よつて当事者の一方である申立人が日本国籍を有する本件離婚については日本の裁判所は裁判管轄を有するものというべく、法例第一六条に依れば離婚については離婚原因発生当時の夫の本国法に依るべきところ、アメリカ合衆国の国際私法に依れば当事者の双方は一方の住所の存する法廷地の法律を適用すべきものと解せられるので、法例第二九条により本件離婚については日本の民法、家事審判法が適用せらるべきものというべきである。

しかして当事者双方本人尋問の結果と本件調停の経過とに依ると申立人と相手方とは婚姻当初は円満であり両名の間に主文記載の二児をもうけたが双方の性格の相違等から次第に夫婦の間円満を欠くに至り、遂に昭和三一年七月申立人は相手方の許を離れ肩書現住所に居を定めて別居し、その後相手方において他の婦人との間に関係を生ずることなどあり、両名は婚姻を継続することができない実情に立ち至り、申立人と相手方との間に離婚及び両人の間の二児を相手方において引取り養育することにほぼ話し合いができ、相手方は申立人に対し金五〇万四千円の支払を了したが、その金額について完全な合意が成立しないことを認めることができる。よつて当裁判所は調停委員佐山武夫及び徳永喜久の意見をきき、諸般の事情を考慮し家事審判法第二四条の調停に代わる審判を為すを相当と認め主文のとおり審判する。

(家事審判官 加納実)

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